里親制度とは

【皆さまへ】

2017年4月7日、塩崎恭久厚生労働相は「同性カップルでも男女のカップルでも、子供が安定した家庭でしっかり育つことが大事で、それが達成されれば我々としてはありがたい」と述べ、同性カップルを里親として容認する姿勢を示しました。

 「同性カップルの里親」をめぐる問題は、2017年4月7日以降、大きく変化していく可能性があります。

下記の情報は、「2017年4月7日以前」のものです。

新たな情報につきましては、レインボーフォスターケアのFacebookページ、Twitterなどで発信していきます。そちらをご確認くださるようよろしくお願いいたします。

 

【日本の場合】

・制度について

 

「保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと」を「社会的養護」と呼びます。社会的養護は、「家庭養護」「施設養護」に分けられます。里親制度は家庭養護として位置付けられています。

 

 

里親制度は「何らかの事情により家庭での養育が困難又は受けられなくなった子ども等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度」「家庭での生活を通じて、子供が成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより、子どもの健全な育成を図る有意義な制度」と定義されています。

 

その種類は次の4種類です。

 

①養育里親

養子縁組を目的とせずに、家庭で暮らすことのできない子供を一定期間(1ヶ月以上)養育する里親
②専門里親

被虐待児、非行等の問題を有する子供及び障害児など、一定の専門的ケアを必要とする子供を、養子縁組を目的とせずに一定期間(原則として2年間)養育する里親

③養子縁組希望里親

養子縁組を前提として、家庭で暮らすことのできない子供を養育する里親

④親族里親

両親の死亡・拘禁等により、児童養護施設、乳児院に生活している子供を引き取り養育する、当該児童の扶養義務者である里親

 

・手続きについて

 

最も基本的な養育里親に登録されるまでの流れは次のとおりです。

 

[相談]

居住地の児童相談所あるいは里親支援機関へ申し出をする。

里親制度について、より詳しい説明などを受け、里親としての資格要件を満たしているかの確認が行われる。調査・面接も行われる。
申し込みの動機、経済状況、健康状態、住宅状況などから、里親としての適性が判断される。

[研修]
養育里親希望者は、養育里親研修を受講。

この課程を修了した者には修了証が交付される。 

[申請]
研修の修了証をもって、児童相談所に申請をする。

[審議]
都道府県知事/指定都市市長児童福祉審議会に諮問して、里親としての適格性について審議してもらう。

[認定]
都道府県知事/指定都市市長は、児童福祉審議会の答申を受け、里親の認定の可否を行い、その結果を申請者に通知する。

[登録]
里親として認定されると、里親登録を行う。

[登録後]

委託の打診→面会→交流(外泊日数を増やしていく)→委託へ
 

・要件/基準

 

法律(省令)上、里親の要件として示されているものは次のとおりです。

(児童福祉法施行規則)  

1 要保護児童の養育についての理解及び熱意並びに要保護児童に対する豊かな愛情を有していること。

2 経済的に困窮していないこと(要保護児童の親族である場合を除く。)。

3 養育里親研修を修了したこと。

欠格事由としては、

(児童福祉法)

1 成年被後見人又は被保佐人
2 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
3 この法律、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 (平成十一年法律第五十二号)その他国民の福祉に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
4 児童虐待の防止等に関する法律第二条 に規定する児童虐待又は被措置児童等虐待を行つた者その他児童の福祉に関し著しく不適当な行為をした者

 

です。

 

 

また、この要件に加えて各自治体が独自の基準を定めている場合もあります。

東京都の認定基準はHPに掲載されています。

 

※東京都は、2018年10月より新たな基準となります。

 

これらの基準をもとに、前述した厳格なプロセスを経て里親委託が行われます。

 

・LGBTが里親になれるか

 

まず、「LGBTが独身者として里親になれるか」ですが、里親の申請・登録は個人でするものなので、独身者が里親の申請・登録から排除されているわけではありません。 

しかし、実際の運用としては、地方自治体HPなどで「研修は夫婦で受けることがのぞましい」などの記載があることから、夫婦で申請・登録することが想定されているようです。里親の適性という面で、独身者であれば様々な要件(経済状況、養育環境等)の判断が厳しくなるのかもしれません。 (※下記のとおり、原則として「配偶者がいること」を条件にしている自治体もいます。)

 

それでは「同性カップルとして里親になれるか」((同性パートナーが配偶者と同じように認められたうえで申請・登録できるか)ですが、同性カップルの存在があまり知られていない事からも、いわば「想定外」の申請と捉えられるかもしれません。これは各自治体の判断に委ねられています。

(実際「同性カップルとしての申請・登録」した事例があるのか、RFCで様々な事例を収集・調査しております。)

 

ちなみに、東京都里親認定基準においては、

「里親申込者は、配偶者のいない場合には次のすべての要件を満たしていること

ア.児童養育の経験があること、または保健師、看護師、保育士等の資格を有していること

イ.起居を共にし、主たる養育者の補助者として子供の養育に関わることができる、20歳以上の子又は父母等がいること」

とされており、認定において配偶者がいることが原則とされ、「配偶者のいない場合」は要件が付加されハードルが高くなっています。

(仮にアの要件を満たした場合、イの「父母等」の「等」に同性パートナーが含まれるかについては、同基準注釈に「社会通念上事実上の婚姻関係のある同居者については…等に含めることは差支えない」との記載があり、場合によってはイの要件を満たすと判断されることもあるかもしれません)

New!2013.10.17 東京都福祉保健局に問い合わせたところ、「等」には同性パートナーは「含まない」と解釈し運用しているとのことです。

 

現在は各自治体の判断に委ねられていますが、現に日本でも多くの子育てをしている同性カップルがおり、海外で多くのLGBTが里親として子育てしている現状について多くの方に知ってもらうことで、将来的に、各自治体も同性カップルを信頼できる里親の候補として想定するようになれば、多くのLGBTが里親制度に関わる時代が来るかもしれません。

(今後、独身の里親についても門戸が広くなる可能性もありますね。)

 

(※)ここで記述している「同性カップル」には、トランスジェンダーの方が戸籍の性別を変更していない場合、戸籍上の性別がパートナーと同性になるケースなども含めています。

 

 

 

・里親制度の現状とその問題

 

下の諸外国との比較にある通り、日本の里親委託率は12%前後(2010年末)と先進国の中でもかなり低い数値であり、施設養護への依存度が高いことがわかります。

 

日本において里親制度が浸透しない理由として、制度の社会的認知度が低く里親登録数が伸びないこと、マッチングがうまくいかないこと(里親の希望条件と合わないこと)、児童相談所の業務が多岐にわたり里親支援体制が不十分であること、血縁関係を重視する文化であること等、さまざまな要因が指摘されています。

 

【諸外国の場合】

・里親委託率の比較

 

 施設養護中心の日本は先進国の中で例外ともいえます。 

 平成24年厚生労働省資料のグラフを見れば一目瞭然です。

 

 厚生労働省「社会的養護の現状について」(平成24年11月版)より抜粋